合宿免許フェスタ開催
メニューを持って来た庖員さんが「おや、Tさん!」と彼もまた驚きの表情。
「俺、高校の噴にバンドを聴いてましたよ。
ツアーで来たの?」「いえ、バンドは今、お休み中で…」つい先日、僕は叩数年間やっていたバンドの活動を休止することに決めた。
メンバーと話し合い、休止期聞は無期限と決めた。
ひと仕事が終わったら熱い湯にとっぷりとつかりたくなったのだ。
「ちょっと温泉に入ろうと思って来たんですよ」「ああそう、それじゃ熱海まで行かないと駄目ですよ、まあカレー食べてってください」熱々のナンは赤ちゃんの腕のようにやわらかく今まさに溶けていくバターの香りは鼻にジンワリと心地よかった。
カレーにはニンジンやらプロッコリーだのがゴツンゴツンという感じで入っていて、し見に行きたいな」かしその野菜のいずれもが十分に煮込んであるために噛めばサックリと口の中でもろく崩れておいしかった。
当然、辛い。
これはかなり辛い。
ピリピリと辛さにしびれる舌を甘いチヤイで包みこむなら甘さと辛さがいい服慨に調和もうひと口と舌先がカレーの辛さを求める。
同時にもうひと口とチャイの甘みを求める。
くり返しくり返し飽きることがない。
「なんか本当においしそうに食べてくれるので」と言って庖員さんがサモサをおごってくれた。
カレーを食べたら満足してしまった。
熱海手前の駅までまた歩いて戻り東京へ帰った。
とっぷりと日が暮れた頃、東京へ着いた。
以前、バンドのレコーディング帰りによく行った「月光泉」という名のお風呂屋さんへ行った。
一歩まちがえばソープのようなゴージャスな名前だが商店街の中にあるごく普通の大衆浴場である。
熱い湯にとっぷりとつかった。
日数年の仕事を休止しての「とっぷり」である。
思わず、「あ、あふっ」と、それは長い長いため息をついた。
「ガキの頃からTさんのファンです」という若い編集者が「これ面白っスよ」と言って本をくれた。
「バンドがんばってください」と付け足す。
「ああ、筋少・:活動休止しちゃったんだよ」と応えると、「えっ…」と絶句した。
もらった本はジャン・ジャック・パルロワの「幻の動物たち」で、ネッシーに代表される未知動物の総覧になっていて面白かった。
「10メートル以上もある巨大なオタマジャクシ」「全長印メートルにも及ぶ巨大なタコ」「体長4メートルのナマケモノ」「地下鉄の壁から飛び出した巨大な翼竜」「ネッシーの正体と思われる全長叩メートルのウミウシ」「体の3分のーが口の巨大なハタ」。
オタマジャクシからハタまでこれはえらい勢いだ。
多摩湖にも『タッシー』全部まとめて神宮前広場に並べて島田洋八に、「んなアホな」とつッ込みを入れてもらいたいものだ。
パルロワは日本の未知動物にも言及している。
屈斜路湖、洞爺湖、池田湖、さらには中禅寺湖にも怪物はいるらしい。
いくらなんでも中禅寺湖にはいないんじゃないかな?バンドの活動休止を記念してどこかへドライブに行こうと誘う友があった。
本当のところは最近、車を買ったため、どっかへ行きたいだけのようだ。
「中禅寺湖に未知動物を見に行きたい」と言うと、「もっと近場にしろ」と言う。
「多摩湖はどうだ?なんかいるだろう」と、パルロワが聞いたならカンカンに怒りそうなことを言う。
「決めた、多摩湖、怪獣タッシーを探しに多摩湖へ行こう」と勝手に決められてしまった。
彼が遠出を嫌がったのは買った車が古い上にスピードも今ひとつ出ないからである。
シトロエン2CVといって、「ルパン三世カリオストロの城」でクラリスが乗って急なカープを曲がる度にユラーリと車体が曲がる側に揺れる。
ユラーリユラーリと、左右に肩を大きく揺らしながら、僕らはよく晴れた道をつっ走って多摩湖方面へ向かった。
2CVのドライバーはキャメルの煙草を口の端にくわえながら「弁当こさえてきたんだ。
湖を見ながら食べよう」などと言った。
「…君さ、ホモじゃないよな?」思わず尋ねてしまった。
「ホモじゃないよー、俺はマメなんだよ」そう言って笑う彼の背後で風景がノンビリと遠ざかってゆく。
窓から拭き込む風が涼しく、あーもう秋か、と思う。
「バンド、何年やってきたの?」「うん?」「長いことやってきたんでしょ?」「うん、…十五、六年になるかな、高校時代からだよ。
最初は俺ともう一人しかメンバーがいなくてね、そいつんちで、ラジカセを前に置いて、そいつがギター弾いて俺がべース弾いて唄を唄って、録音して、それが始まり」「ドラムは?他のメンバーはいなかったんだ」っていうライブ「うん、だんだん集まって来たんだよ。
その噴、道玄坂に『ドゥーイン』ハウスがあってね。
バンドやってる高校生がたむろしてたんだよ。
気が合う連中同士が会うと自然に『俺ら一緒にやんないか?』そうやって今のメンバーに固まって話になって、ったんだ」「ふーん、青春だね」「青春かねー?」「青春だよ」ユラーリユラーリと両肩を揺らしているうちに多摩湖についた。
湖面が陽の光を受け音を立てそうなぐらいに輝いている。
「タッシーはどこにいるんだ、T君」「聞かれでも知らんよ」「正体はなんなんだ。
恐竜か?巨大化したウミウシか?」「長首のアシカが存在すれば巨大水中生物の説明はうまくつくとパルロワが書いてたぞ」「そうか、おいT君、ここでお弁当を食べよう」お弁当はタコスであった。
パリパリの皮はごはんのおコゲのように小気味よく口の中でくだけ、少し冷たいアボカドやキャベツをうまい具合にくるむ。
ポットにつめてきた紅茶はまだ熱々で、白い湯気を立てながらマグカップの中へこちらもまたコポコポと実に小気味よい音を立てている。
口に含むと香りがパッと広がっていった。
「ハー、どうにもうまいな」僕が感心すると友人はニタリと笑って、「オレ、本当はホモなんだ」と言った。
一瞬マジかとあせったが、続けて「オレ、今度結婚することになった」と、湖面を見ながら言った。
「あ?あの、ずーっともめてた娘と?もう大人なんだね。
初代だもんなお互い」「いろいろあるよねT君、こうともなると、どこか行きたくなっちゃう年噴だよね、俺ら」「そーか…おめでとう。
そうか、なんか俺らもバンドをやめたり結婚したり、なんか」友人はため息をついて、そして輝ける多摩湖にむかつてタッシーは出てきちゃくれなかった。
「タッシー」と絶叫したが、ブースカを探してアチコチ歩きまわるの巻今、私の中で快獣ブースカがプームである。
ツアー先の広島でファンからもらったブースカのぬいぐるみを本当の子供のように可愛がっている。
クマのプーさんのぬいぐるみからはぎ取ったシャツを着せ、赤ちゃん用のしま模様パンツを履かせている。
Tシャツには、押すと3種類のプースカの声が出る小さなオモチャを仕込んである。
こうしてパーツアップした言わばスーパーブースカと、私は毎日をくらしているのだ。
朝起きたらオモチャのボタンをカチャッ。
「しおしのパー」。
夜、帰宅するや再びカチャッ。
「プリプリのキリリンコ!カッカッカー!」。
夜、枕元でおやすみのカチャッ。
「パラサパラサー!」。
そんなふうにして私とブースカの蜜月の時は流れていくのだ。
「アンタいくつだ?」というつっこみには明確にこたえておこう。
この冬の終りには、私はお歳になる。
嫁も子も、まだ、ない。
「オーケン、池袋でブースカ博覧会やっているよ。
一緒に行こう」そんなさみしい三十路男を気遣ってか、タロー子が私を「ブースカ博」に誘った。
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